重曹とクエン酸について説明していきます!
さてさて、12月に入り大掃除を考えている方も多いのではないでしょうか?そんな方々 『知ってるとちょっと便利な知識』 を書きたいと思います。化学式をおりまぜながら説明していきます。 “化学” を身近に楽しく感じる事が出来ると思いますので、最後まで読んで下さいね!
これだけは覚えて欲しい基礎知識
②クエン酸 → 弱酸 → 水垢を落とすのに効果的
ちなみに重曹とクエン酸は、ワンセットとして所持することをお勧めします!
筆者プロフィール
- 企業内で国家資格を生かして働いている(同業者の方もいると思うので、具体的な職種は書かないでおきます)
- 化学系の大学を卒業している(基礎知識はあります)
- 給与はお安め(←どうでもいい情報w)
では、スタートです!
重曹の特性
- 弱アルカリ性
- 研磨作用
- 消臭効果がある
- 熱を加えることで炭酸ガスが発生する
1,弱アルカリ性 + 熱 → 強アルカリ へ
重曹は、炭酸水素ナトリウム・重炭酸ナトリウム・ベーキングソーダ など色々と呼び名があります。PH8.3 の弱アルカリ性です。実は水にはあまり溶けません。
酸性・アルカリ性を判断する指標です。
数値が低いほど強酸、数値が高いほど強アルカリ、PH7は中性 と呼ばれます。
強酸も強アルカリも危険ですので、使用には十分注意しましょう!
強アルカリ性が目に入ると失明の原因になりますので、実験などで取り扱う時には保護メガネを使います。皮膚につくと、皮膚を溶かす作用があります。
キッチンの掃除の際には、強アルカリによりアルミ・亜鉛・鉛を腐食させる作用がありますので、使い間違えないようにして下さい。
重曹のPHの変化について、簡単な検証実験をしてみました!
[timeline title="重曹に熱を加えたときのアルカリ性の変化 検証記録"]
[ti label="step1" title="常温の水道水に溶かしてみる"]
・今回使う鍋はSTAUBのホーロー鍋(10年以上愛用)
・水道水1Lに対し30g(約大さじ2)
[/ti]
[ti label="step2" title="PH値"]
・常温の水には あまり溶けず粉が残っている状態。
・目視となりますが、PHは8前後。
[/ti]
[ti label="step3" title="コンロで熱を加えてみる"]
・強火(中火または弱火で良いです)で15分ガスコンロで熱を加える。(重曹は熱を加えると二酸化炭素を作りますので発泡します。)
※これは火力が強すぎたため、重曹が飛び散っている状態・・・。
・目視にてPHは11前後(アルカリが強まる)
[/ti]
[ti label="step4" title="冷ました後に中和処理"]
・(今回油汚れの無い鍋での実験のため)強アルカリをそのまま廃棄出来ないので同量のクエン酸(弱酸)を加えて、中和反応させる
・中和反応は発熱を伴うため、この作業を行うのであれば、必ず液体が冷めてから行ってくださいね!(この化学反応二酸化炭素を作るため、発泡します。)
※熱い液体のまま弱酸加えると危ないよ!!!
・PH確認 大体6前後。少しだけ酸性に偏っていますが、弱酸程度なので、これなら廃棄しても大丈夫!
[/ti][/timeline]
【コラム】
油汚れが落ちるメカニズム
寒くなると、温かいもの食べたくなるなぁ~。カレーとかシチューとか・・・。
カレーやシチューは、美味しいし作るのも簡単ですね!翌日に温め直して食べても美味しいですよね。ただ問題は、鍋底。気をつけていても焦げる事あって、掃除が大変ですよね・・・。
冬場になると煮込み料理が美味しいですね!ただ、焦げ付いた調理器具洗うとなると、気分が滅入りますよね。重曹は、基本弱アルカリ性なので油を落とす作用はあまり強くありません。焦げた鍋底に水を張り、そこに重曹を入れて温めると焦げた汚れが、剥がれる事をご存知ですか?まずは、その内容から詳しくみていきましょう!
化学的に説明
①加水分解
油(油脂)にアルカリを加えることにより、石鹸が作られる(けん化作用)
普通は、水と油は混ざりません。それを可能にするのが界面活性剤となります。油、水、界面活性剤を入れて混ぜるとミセル化(→次で説明します。)が起こり混ざります。これを乳化作用といいます。料理や化粧品などでも使われている性質です。
②石鹸によるミセル化
ミセル化を下記の図解で説明します。ちなみにこの作用の応用で、親水性と親油性が逆転した性質を持たせれば、油の中に水を混ぜることも可能です。
・補足
2,研磨作用
上記でも書きましたが、重曹はあまり水に溶けません。硬度は2.5程度(それほど硬くない)。
重曹をまいて擦るとクレンザーと似た効果が出ます。また硬度がそれほど高くないため、鍋やシンクに傷がつきにくいです。ホーロー鍋の硬度は5、クレンザーの硬度は7。ホーロー鍋にクレンザーは使えませんが(鍋に傷がついてしまいます。)重曹であれば使用しやすい数値です。とは言え、これは悪まで数字上の話なので絶対傷がつかないとは言い切れません。そこはご理解下さい。
また、キッチンで使用されている食器用洗剤が弱アルカリ性であれば、混ぜても問題はありません。両方とも弱アルカリ性なので、足したら中~強アルカリ性になるのでは?と疑問に思うかもしれませんが、そんなにアルカリ性が高くなることはありません。詳しい内容は書きませんが、これには解離度が関係しています。左の写真が実際に調べた結果で、PH8ぐらいですね。温めてから使用すると洗浄作用は強くなりアルカリも強くなりますので、扱いには注意して下さいね!
3,消臭効果
こちらは酸性による悪臭に対しての消臭効果です。主な反応は、中和反応です。
酸性とアルカリ性には、分かりやすい特徴があります。日常生活で実感している方も多いかと思います。
酸性 → 味はすっぱい。 アルカリ性 → 味は苦い。
臭いにも、酸性・中性・アルカリ性があり、酸性の臭いには“酸っぱいにおい”がするのが特徴となっています。汗の酸化、食品の腐敗、油の酸化・・・などには有効です。生ごみ・衣服・腐敗臭には有効です。
一方、トイレの臭いの原因はアンモニアになりますので、これはアルカリ性となります。重曹では消臭効果は得られません。また魚の生臭いにおいも原因はトリメチルアミン(TMA)(アルカリ性)なので、重曹での消臭効果は得られません。逆に酸性のものが有効になりますので、クエン酸が効果的になります。
4,熱を加えることで炭酸ガスを発生させる
こちらは主にお菓子作りの“膨らまし粉”の作用になります。
クエン酸の性質
クエン酸の特徴
- 弱酸性
- 消臭効果
1,弱酸性
クエン酸も重曹と同じ条件でのPHの検証実験をしてみました!
[timeline title="クエン酸に熱を加えた時のPH変化 検証"]
[ti label="step1" title="常温の水に溶かしてみる"]
・上記と同様の設定です。1Lの水に対してクエン酸30gを溶かします。
・こちらもクエン酸が溶けず残りました。
[/ti][ti label="step2" title="PH値"]
・目視でPHは4~5ぐらい。弱酸ですね。
[/ti][ti label="step3" title="熱を加える"]
・条件は重曹と同じ。強火(中火または弱火で良いです)で15分ガスコンロで熱を加える。
・残っていたクエン酸は、全て溶けました。
・目視にてPH3~4ぐらい。それほど酸性が強くなりませんでした。
[/ti][/timeline]
クエン酸は弱酸性で、かんきつ類などに含まれる有機化合物の一種です。爽やかな酸味が特徴的です。その特徴から、香りの調整や味の調整などに使われています。
水垢を落とす作用
水垢の成分については色々と調べたのですが、はっきりした原因物質の特定の記載が見つけられませんでした。炭酸カルシウムが多く含まれていますが、それ以外の物質も含まれています。
- 水垢(みずあか)は、やかん、ボイラー、不適切な保守状況にある温水式セントラルヒーティング装置の内側などにみられる、硬くて灰色がかった、粉を吹いたような堆積物である。スケール(Scale)とも呼ばれる。硬水が蒸発するようなパイプの内側やその他の表面などにも同様の堆積物が見られることがある。
- 水を熱する装置などに堆積するタイプのものは、主要な成分は水から沈殿した石灰(炭酸カルシウム)である。硬水はカルシウムやマグネシウムの炭酸水素塩や、その他の塩などを含んでいる。電気ケトルなどに堆積する石灰をライムスケール(石灰鱗, Limescale)と呼ばれる。
- 水垢と呼ばれるが主成分は石灰なので、不衛生なものではない。酸に溶ける性質があるため、溜まった石灰鱗の除去はクエン酸が有効である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
上記の内容だけでなく、水分に含まれている金属(カルシウム、マグネシウム、ケイ素など)が渇いて残った結果とも言われています。
一つだけ、作用として説明出来そうな事項がありましたので、そちらだけ紹介をしようと思います。
炭酸カルシウム = 石灰
炭酸カルシウムとクエン酸の反応
中和反応としては、上記の反応で間違ってはいないのですが、クエン酸と水垢の洗浄に関する学会誌を見つけましたので、紹介しておきます。⇒ 日本家政学会誌
こちらの学会資料の内容には
【クエン酸はカルシウム系の洗浄に一定の効果はあるが、炭酸カルシムをクエン酸で溶かした後に出来るクエン酸カルシムは水に溶けにくく結晶化するため、長時間放置すると新しい生成物により汚れが落ちにくくなる。検証実験により約1日放置することで、クエン酸カルシムの結晶が出来る事が判明している。】
と書かれていました。ただこの検証実験では、他の酸と混ぜたり酸の種類を変えたりしていましたが、水の温度は約20℃設定で電気ポット内の温度と違うのが私は気になりました。条件を変えることで実験結果が変わることもあるので、明確な事は不明 となります。
私が調べた中で、“クエン酸がカルシウムとキレートを形成して安定する”という記事もありましたが、根拠と呼ぶにはちょっと弱いかな?と私は感じましたので、今回は除外としました。
【クエン酸について結論】
- 水垢を落とす効果はあるが、作用機序で明確な根拠はハッキリしていない。
- 石灰=炭酸カルシウム を落とす作用を有しているが、長時間放置してしまうと違う結晶体が出来るため、汚れが落ちにくくなる可能性がある。
- 水垢を落とすのであれば長時間放置は避け、水で良くすすぐなどの処置をする方が良い。
- 酸性の性質を有しているので、アルカリ性の汚れには有効。石鹸がアルカリ性を有しているので、石鹸落としには有効。ただし、皮脂は油なので洗浄力はない。
消臭効果
これについては、重曹部分の消臭効果で記載しました。中和反応を利用しています。
【コラム】
やってはいけない行為(薬品は正しく使いましょう)
重曹もクエン酸も正しく使うと、とても便利で良い商品です。双方とも食品添加物以上の製品なら、少量であれば口に入っても大丈夫です。ですが、双方ともアルカリ性・酸性の特性を生かす使い方になりますので、当然、相性の良くないものも存在します。そちらをしっかり理解して、便利に使って行きましょう!
重曹とクエン酸を混ぜて使用
ここまでブログをちゃんと読んでくれた、あなたに今更言う必要もないと思いますがメモ書きとしてポイントを書いてみますね!
重曹と相性の悪いモノ
使うのを避けるべきモノや場所を紹介
- アルミや銅 → 黒く変色します
- 木や畳 → 黄色く変色します
- ワックスかかったフローロング → ワックスが取れてしまいます。(ワックスも油です)
- 漆器・大理石 など → 傷がつくことがある(研磨作用です)
クエン酸と相性の悪いモノ
化学反応で避けるべきものもありますので、しっかり守って下さいね!
- 塩素系には混ぜていけません → 塩素ガスは有毒です。塩素系の洗剤はアルカリ性なので中和反応が起こり塩素ガスが発生します。
- 重曹に比べると水にやや溶けやすいので、濃度が上がると酸性が強くなります → 強酸は吸水作用がありますので、肌につくと(やけどに似たような感じに)黒くなります。強酸が衣服につくと穴があきます。ちなみに強アルカリはタンパク質を凝固させるので、こちらも黒くなります。
- ポット洗浄は、長時間放置しない → クエン酸カルシウムの生成をさけるため
- 大理石・鉄・セメントは避ける → 錆びる可能性がある
重曹、クエン酸の特性を詳しく説明しましたが、どうでしたか?
それぞれの特性を生かして上手に使って下さいね。
化学の知識があると、様々な生活の知恵としても活用できますよ!
②クエン酸 → 弱酸 → 水垢を落とすのに効果的